腫瘍(がん)

様子をみるという選択は?|犬の乳腺腫瘍

芸能人の乳腺腫瘍のニュースを良く耳にします。

人では11人に1人がかかるそうです。

かなりの確率なんですね。

 

動物ではどうでしょうか。

犬の乳腺腫瘍の発生率は500頭に1頭です。

すごく少ないじゃないか!そう思われると思いますが

実はこの数字、ほとんどの家庭犬が避妊手術をするアメリカのデータです。

 

避妊手術をしてない子では、4頭に1頭乳腺腫瘍になると言われています。

良性悪性は別としてかなりの確率ですね。

 

特に年齢があがるとなりやすいです。

わんちゃんが長生きするとできやすくなるのも事実です。

 

発生を防ぐには避妊手術が効果的です。

初めての発情前であれば、0.05%とかなり確率が低くなります。

初めての発情は小型犬で7−8ヶ月くらいが一般的でしょうか。

 

乳腺腫瘍やその他の病気の予防のために避妊手術をするかは、

飼い主様の価値観や考え方によるところが大きいです。

 

さて、犬の乳腺腫瘍にはいくつかの問題点があります。

 

 

・良性悪性の判断が手術前には難しい

多くの腫瘍では手術前に悪性なのかを判断してから手術に望みます。

そのために一部のみを取って、病理検査する事があります。

これを生検といいます。

 

しかし、乳腺腫瘍では1つの乳腺腫瘍の中でも、良性に見えるところと

悪性に見える所が混ざる事があります。

生検は全体でなく一部分だけ(数ミリ台)です。

もし良性に見える部位にあたって、様子をみた。

そして実は悪性で手遅れなんて事もありえます。

 

治療する側も、患者さんにとってもこんなに悲しい事はありません。

となると、手術で全てのできものを取った方が間違いは少なくなります。

 

・良性腫瘍が悪性になる

「乳腺のできもの何年もあったけど、大きくならなかったわ。でも最近急に大きくなって」

と言われる事があります。

摘出してみると悪性だったと言う事がたまにあります。

乳腺の良性腫瘍は悪性に変わる可能性があります。

 

「乳腺にできものがありますが、様子をみましょう」にはリスクがあります。

 

・1センチ以下で摘出できれば、完治させられる可能性が高い

乳腺癌は大きさが小さい程転移を起しにくく、手術で完治させられる可能性が高いです。

 

 

「乳腺腫瘍があるけど、もう少し様子を見ましょう」と動物病院でいわれたら、

飼い主とわんちゃんにリスクを負わせている事になります。

ただし特別な理由(麻酔がかけられないとか、発情期で乳腺炎を疑うとか)があれば、正しい判断です。

 

 

少し難しい話になりました。

6ヶ月で避妊手術を受けている子や男の子は、「乳腺腫瘍って言うのがあるんだねー」

という位でいいかと思います。

女の子で避妊手術を受けてない子の飼い主さんには、ぜひ知っておいて欲しいお話です。

 

結論はとういと、乳腺腫瘍で様子をみるという選択は?

「転移や悪性化のリスクを背負う事になります」

 

 

 

 

 

 

 

最後に「乳腺癌をこのままにしたらどうなりますか」というご質問をたまに受けます。

そんな例をご紹介します。

 

ゴールデンレトリーバーの10歳の女の子です。

乳腺の所にできものがあるのは気づいていましたが、年だから様子をみていたとの事です。

しかし、大きくなって出血や臭い、膿みでかわいそうになってきたそうです。

本人も気にしてずっと舐めて、皮膚炎も起しています。

食欲も落ちています。

 

とれるなら取ってあげたいとのご希望で来院されました。

 

かなり出血と化膿しています。

乳腺の腫瘍はある程度の大きさになると破裂する事があります。

 

幸いにもこの子は転移は見られなかったので、

摘出手術を行いました。

手術の映像が開きます。
苦手な方はクリックしないでください。

 

手術後は元気にご飯を食べてくれるようになりました。

病理検査の結果は、悪性の乳腺癌でした。

大きさもかなりあるので、今後の転移が心配です。

 

乳腺の『しこり』は様子をみようかなと思う前に、ご相談ください。

 

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