外科手術

心臓の手術|PDA(動脈管開存症)

先天性の心臓病です

と可愛い自分のわんちゃんが言われたらどうでしょうか。

かなりの方がショックで落ち込むと思います。

 

それはそうです。

先天性の心臓奇形といわれると、まだ若いのに

余命を宣告されてようなものです。

 

先天性の心奇形の治療は,なかなか難しいです。

しかし、中には外科手術で治せるものもあります。

その代表がPDA(動脈管開在症)です。

 

PDA(動脈管開存症)って?

お母さんのお腹の中にいる時は、赤ちゃんは呼吸する必要がありません。

全部お母さんの臍の尾から酸素をもらえます。

 

そのため、肺へ行く血液が全身へ行く血管にバイパスします。

これが動脈管です。

動脈管は正常では、生まれてすぐに自然に閉じます。

 

しかし、これがうまく閉じない子がいます。

うまく閉じないと、大動脈から肺動脈に異常な血液が流れてしまいます。

 

心臓からでた血液が、肺と心臓をぐるぐる回るわけですから、

心臓と肺に負担をかけないわけは、ありません。

 

実際のPDA(動脈管開存症)の子

 

さて今回は、そんな先天性の病気をもった子のお話です。

小柄で非常に可愛い子です。

5歳で元気な盛りのはずですが、

最近疲れやすく、心臓に雑音があると他の病院でいわれたそうです。

 

心臓の音を聞いてみると、

ちょっと変わった雑音がします。

「連続性雑音」などと難しくいわれたりしますが、

例えて言うなら「ぶんぶんごま」の音です。

懐かしいアレです。

(昔、獣医学生にPDAの雑音を聞いてもらったとき、

「ぶんぶんごまみたいな音がするでしょ。」

といったらキョトンとされました。今の子は遊ばないのでしょうか)

 

話はそれましたが、雑音の種類からするとPDAで間違いなさそうです。

どう治療するか、作戦をたてるために心臓のエコーとレントゲンをとりました。

 

肺に行く動脈に異常な血流があります(緑っぽい血流が異常な血流です)

レントゲンでは心臓がかなり大きくなっています。

かなり負担をかけているようです。

 

ちょっと手術のリスクは高そうです。

血流のスピード早いほど、心臓や肺の状態は良いのですが

あまり良くない。

手術に踏み切るか迷うところです。

手術で寿命を縮めてしまうかもしれません。

しかし、このままにすれば近いうちに心不全で亡くなる可能性が高い。

 

よくよくオーナーさんと相談です。

 

結論は、「この子の未来のために手術をする」と言うことでした。

 

PDAの手術当日

万全の準備をして望みます。

麻酔をかけて、皮膚を消毒していきます。

そして胸を開けていきます。

 

矢印のところが動脈管です.

太さ5ミリくらいでしょうか。

手術の画像が開きます
ご注意ください

指で触ると、雑音が振動として指に伝わっていきます。

この動脈管、非常に脆い血管です。

 

ここを結ぶために糸を通していきます。

そのため周りから血管だけを剥がしていきます。

裏側の血管を破ると、大出血です。

今まで破ったことはありませんが、血の海になるそうです。

 

とにかく慎重にゆっくりゆっくりです。

この子の命を預かっているのですから。

 

無事1本のテープと糸が通りました。

テトロンテープという特殊なテープです。

当院では、動脈管を完全に結紮するために、太いテトロンテープと

糸の3箇所で結びます。

手術の画像が開きます
ご注意ください

 

結んだ時に心拍が落ちたり、異常な血圧になるので、ゆっくりゆっくり時間をかけて締めていきます

緊張感がある瞬間です。

とくに大きな問題もなく締めることができました。

手術の画像が開きます
ご注意ください

あとは空気を抜くチューブをいれて、胸を閉じて終了です。

術後も調子は良さそうです。

 

3日後、心臓のエコーを確認しました。

以前にあった異常な血流は無くなっていました

手術は成功です。

痛みもなくなり、安定したところで元気に退院していきました。

今後の経過観察は必要ですが、

元気に帰ってくれたことが何よりも嬉しい瞬間です。

長生きしてくださいね。

 

PDAを早期に発見するには?

早く発見すればするほど、治療はしやすくなります。

子犬をお迎えしたら、動物病院で聴診をしてもらってください

聴診器でよく聞けば、多くの場合はわかります。

早く治療すれば治せる病気です。

 

LINEでブログの更新などをお知らせしています。よろしければご登録ください。

友だち追加

岐阜市柳津町丸野4−17−1  はづき動物病院 

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

最近の投稿

ページ上部へ戻る