外科手術

早く気づいて欲しい!陰部から膿み|子宮蓄膿症はなぜなる?治療は?

ある日急に、飼っているわんちゃん猫ちゃんが元気がなくなる…

しかもお尻が下痢みたいに膿みで汚れている

でも下痢ではないし…

 

こんな症状は緊急事態です。

 

子宮蓄膿症」という病気を聞いた事があるでしょうか。

文字通り子宮の中に菌が入り、膿みが溜まる病気です。

この『膿み』というのが想像以上の量なのです。

 

チワワの子宮が、名宝ハムくらいの大きさにふくれます。

中には膿みが充満します。

(名宝ハムが好きな方ごめんなさい。私も大好きです)

 

 

 

 

 

もしこれがはじけたら…

命が助かるのは厳しい状況になります。

 

子宮蓄膿症、いったいなぜ起きる?

 

大きな特徴が5つあります

避妊手術をしていない子

子宮蓄膿症は子宮に膿みがたまる病気です。

避妊手術を受けている子は子宮がないので起こりません。

また、卵巣だけを切除してもホルモン影響がないので、通常は起こりません。

 

生理があって1−2ヶ月

わんちゃんの発情パターンは人間と大きく違います。

わんちゃんは妊娠していなくても、発情後1−2ヶ月くらいの間

妊娠しているホルモン状態になります。

よく発情後に乳腺が張ったり、しぼるとおっぱいが出る子がいます。

これは妊娠している時のホルモンが出ているので起きる事です。

 

この時期にぬいぐるみを愛おしそうに育てたりする、可愛い光景も見られます。

この期間を偽妊娠といいます。

飼い主さんによっては想像妊娠などと言われる事もあります。

 

妊娠しているホルモン状態なので、子宮の粘膜は腫れ

お腹の赤ちゃんを攻撃しないよう、子宮内の免疫を落としています。

 

その結果、細菌が侵入しても普段なら戦えますが、

この期間は抵抗力が落ちています。

その結果、細菌が勝ち子宮内で膿みが溜まります

 

5歳以上(多くは10歳以上)

子宮蓄膿症は何度も生理をむかえた、わんちゃんに多くなります。

発情を繰りかえすと子宮の粘膜が厚くなり、細菌感染を起しやすくなります。

 

未避妊の9歳以上は2/3以上が発症する

避妊手術を受けていない9歳以上のわんちゃんが66%以上が

発症するとも言われています。

実際もう少し少ない気もしますが、よく発症する病気である事は確かです。

かなりの確率です。

 

治療には外科手術

子宮に膿みが溜まってしまったとき、抗生剤のみで対処する事は難しいです。

膿みをできるだけ早く体から取り除く事が必要です。

手術で子宮と卵巣を摘出するのです。

しかし手術をしても5−8%の子が亡くなることがある怖い病気です。

細菌の出す毒素により、腎臓に障害が出ていると厳しくなります。

 

実際に子宮蓄膿症になってしまった子は?

 

この子は12歳の女の子のチワワです。

普段はとても社交的で元気です。

12歳になっても食欲は衰えません。

 

そんな子が、ここ何日かご飯を食べない。

いつも食欲満点の子が食べないとなれば、飼い主さんにとって大事件です。

 

しかも『下痢』をしている。

水ばかり飲んでいる。

 

きっと下痢でお腹が痛いのだろうと思い、

当院にいらっしゃいました。

 

お話を聞き、お尻の方を見てみると

あれ…下痢じゃない。

下痢だと思っていたのは、膣から出てきた「膿」でした。

聞いて見ると1ヶ月程前に生理があったよう。

 

エコーと血液検査で確認していくと、

子宮内には濁った液体が充満しています。

 

血液検査では炎症マーカーが測定の上限を超え、

白血球は5万近くあります。(通常は1万程度)

しかも腎数値が高い

 

子宮蓄膿症です

 

すぐに点滴を初めて、できるだけ腎臓を保護しながら

手術の準備をします。

 

飼い主様もすぐに手術に同意していただけました。

 

お腹を開けて子宮を見ていきます。

お腹のなかは膿みが溜まった子宮でパンパンです。

破らないように慎重に、素早く血管を結んで摘出していきます。

 

子宮の画像が開きます。
苦手な方はご注意ください

 

なんとか無事に手術は終わりました。

手術後は数日間ぐったりしていましたが、

徐々にご飯も食べれるようになり、腎臓の数値も安定したため

1週間で退院できました。

 

あと1日遅ければ危なかったと思います。

 

子宮蓄膿症からわんちゃんを守るには

 

未避妊の女の子で、食欲がない、膿みがおしりについている、水ばかり飲んでいるなど

あやしい症状があったらできるだけ早くご相談ください。

陰部から膿みが出ないタイプの事もあります。

 

治療を成功させる一番のコツは、できるだけ早く気づく事です。

でも、一番いいのは子宮蓄膿症にかからない事です。

今の所一番確実なのは避妊手術です。

 

 

 

 

 

 

 

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