9.252018
ある日急に、飼っているわんちゃん猫ちゃんが元気がなくなる…
しかもお尻が下痢みたいに膿みで汚れている
でも下痢ではないし…
こんな症状は緊急事態です。
「子宮蓄膿症」という病気を聞いた事があるでしょうか。
文字通り子宮の中に菌が入り、膿みが溜まる病気です。
この『膿み』というのが想像以上の量なのです。
チワワの子宮が、名宝ハムくらいの大きさにふくれます。
中には膿みが充満します。
(名宝ハムが好きな方ごめんなさい。私も大好きです)
もしこれがはじけたら…
命が助かるのは厳しい状況になります。
大きな特徴が5つあります
避妊手術をしていない子
子宮蓄膿症は子宮に膿みがたまる病気です。
避妊手術を受けている子は子宮がないので起こりません。
また、卵巣だけを切除してもホルモン影響がないので、通常は起こりません。
生理があって1−2ヶ月
わんちゃんの発情パターンは人間と大きく違います。
わんちゃんは妊娠していなくても、発情後1−2ヶ月くらいの間
妊娠しているホルモン状態になります。
よく発情後に乳腺が張ったり、しぼるとおっぱいが出る子がいます。
これは妊娠している時のホルモンが出ているので起きる事です。
この時期にぬいぐるみを愛おしそうに育てたりする、可愛い光景も見られます。
この期間を偽妊娠といいます。
飼い主さんによっては想像妊娠などと言われる事もあります。
妊娠しているホルモン状態なので、子宮の粘膜は腫れ
お腹の赤ちゃんを攻撃しないよう、子宮内の免疫を落としています。
その結果、細菌が侵入しても普段なら戦えますが、
この期間は抵抗力が落ちています。
その結果、細菌が勝ち子宮内で膿みが溜まります
5歳以上(多くは10歳以上)
子宮蓄膿症は何度も生理をむかえた、わんちゃんに多くなります。
発情を繰りかえすと子宮の粘膜が厚くなり、細菌感染を起しやすくなります。
未避妊の9歳以上は2/3以上が発症する
避妊手術を受けていない9歳以上のわんちゃんが66%以上が
発症するとも言われています。
実際もう少し少ない気もしますが、よく発症する病気である事は確かです。
かなりの確率です。
治療には外科手術
子宮に膿みが溜まってしまったとき、抗生剤のみで対処する事は難しいです。
膿みをできるだけ早く体から取り除く事が必要です。
手術で子宮と卵巣を摘出するのです。
しかし手術をしても5−8%の子が亡くなることがある怖い病気です。
細菌の出す毒素により、腎臓に障害が出ていると厳しくなります。
この子は12歳の女の子のチワワです。
普段はとても社交的で元気です。
12歳になっても食欲は衰えません。
そんな子が、ここ何日かご飯を食べない。
いつも食欲満点の子が食べないとなれば、飼い主さんにとって大事件です。
しかも『下痢』をしている。
水ばかり飲んでいる。
きっと下痢でお腹が痛いのだろうと思い、
当院にいらっしゃいました。
お話を聞き、お尻の方を見てみると
あれ…下痢じゃない。
下痢だと思っていたのは、膣から出てきた「膿」でした。
聞いて見ると1ヶ月程前に生理があったよう。
エコーと血液検査で確認していくと、
子宮内には濁った液体が充満しています。
血液検査では炎症マーカーが測定の上限を超え、
白血球は5万近くあります。(通常は1万程度)
しかも腎数値が高い
子宮蓄膿症です。
すぐに点滴を初めて、できるだけ腎臓を保護しながら
手術の準備をします。
飼い主様もすぐに手術に同意していただけました。
お腹を開けて子宮を見ていきます。
お腹のなかは膿みが溜まった子宮でパンパンです。
破らないように慎重に、素早く血管を結んで摘出していきます。
なんとか無事に手術は終わりました。
手術後は数日間ぐったりしていましたが、
徐々にご飯も食べれるようになり、腎臓の数値も安定したため
1週間で退院できました。
あと1日遅ければ危なかったと思います。
未避妊の女の子で、食欲がない、膿みがおしりについている、水ばかり飲んでいるなど
あやしい症状があったらできるだけ早くご相談ください。
陰部から膿みが出ないタイプの事もあります。
治療を成功させる一番のコツは、できるだけ早く気づく事です。
でも、一番いいのは子宮蓄膿症にかからない事です。
今の所一番確実なのは避妊手術です。
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