内科

心臓病の治療は日々進歩する|僧帽弁閉鎖不全症とEPIC study

先日の金曜日は診察時間を短縮して御迷惑をおかけしました。

実は心臓病のセミナーに参加してきました。

なんとこのセミナースタートが夜8:00で終わるのが11:00です。

夜中です。

夜遅くまで勉強していると、学生の試験前日を思いだします。

心臓病の治療をアップデートするという事で、

2名の心臓の認定医の先生が講師としてお話されました。

 

この心臓病の分野、治療の進歩が早いのです。

数年前の常識ががらっと変わる事もあります。

 

ちょっとマニアックな内容にありますが、

心臓病(僧帽弁閉鎖不全症)のわんちゃんの飼い主様はぜひ読んでみてください。

 

※飼い主様にわかりやすくするため、できるだけ表現を噛み砕いています。

そのため獣医師が読むと一部不正確と思われる表現になるかも知れませんがご了解ください。

 

○僧帽弁閉鎖不全症とは

全身に血液を送り出すポンプの役割が心臓です。

効率よく送り出すために、逆流防止の弁が4カ所ついています。

左側の心臓の弁の閉まりが悪くなるのが僧帽弁閉鎖不全症です。

心臓の弁の変性(弁が分厚くなる)ので、自然に良くなったりはしません。

弁の締まりが悪いと血液が逆戻りします。

そして血液が渋滞します。

その結果、左心房がパンパンになり

ゆくゆくは肺にお水が溜まります(肺水腫)

 

心臓の外科手術なども一部の専門機関では行われていますが、

費用やリスクなどから今の所、一般的ではありません。

 

そこで薬での治療が一般的になるのですが、

弁の変性を遅らせるお薬はありません。

治療は血液の渋滞(うっ滞)を減らして心臓の負担を減らす事を目標にします。

 

そして今、僧帽弁閉鎖不全症のキーポイントになる薬がピモベンダンです。

ピモベンダンはベトメディン、ピモハート、ピモベハートなどの商品名で動物用に承認されています。

心臓の強心作用と血管を広げるダブルの作用があるお薬です。

 

そんなピモベンダンの使い方にここ数年で大きな変化がありました。

 

○ピモベンダンは心不全になるのを15ヶ月伸ばす

2016年に発表された論文です。

超有名論文で、EPIC studyといいます。

最初読んだ時は本当にびっくりしました。

 

僧帽弁閉鎖不全症のわんちゃんを全世界で、ピモベンダンを飲んでもらう子、飲まない子に分けて

心不全になるまでの時間を比べました。

 

その結果は、心不全やそれで亡くなるまでの時間を15ヶ月長くしていました

 

15ヶ月ってわんちゃんの寿命の1/10に相当する長さです。

人でいえば7−8年です。

それだけの長さをお薬で快適に過ごせれば、かなり効果が高い薬といます。

 

ただし全ての子が15ヶ月のびる訳ではありません。

そして使い方には大きなポイントがあります。

 

○ピモベンダンは早い段階からスタートする

数年前までピモベンダンは心不全になったらスタートするお薬でした。

つまり、肺にお水がたまったり何かしらの症状がでたらスタートでした。

 

しかしEPIC studyでは、

心不全を起す前に基準を満たしたらスタートした方が、長生きするというものです。

 

基準は大きなものが3つです。

 

・エコーで左心房が大きくなっている

・エコーで左心室が大きくなっている

・レントゲンで心臓全体が大きくなっている

 

非常にわかりやすい基準です。

当院で心臓に雑音があるとエコーとレントゲンを必ず撮らせてもらうのは、この理由です。

 

心臓の治療で聴診、身体検査はとても重要です。

しかし心雑音を聞くだけではせっかくいいお薬(ピモベンダン)があるのに

そのチャンスを逃してしまうかもしれません。

 

しっかり身体検査して、エコーやレントゲンなどでしっかり確認する、

それが今の獣医医療に求められる姿なのかなと思います

 

心臓のお薬は飲んでいるけど。これで本当に大丈夫かなと思ったらお気軽にご相談ください。

その他にも肺高血圧の治療、肺水腫の緊急治療などの話題もありましたがまたの機会に書きたいと思います。

明日からの診察で役に立つそんなすばらしいセミナーでした。

 

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岐阜市柳津町丸野4−17−1  はづき動物病院

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