腫瘍(がん)

呼吸がくるしい!胸の中のリンパ腫|猫の縦隔型リンパ腫

猫ちゃんは胸の中にリンパ腫ができる事があります。

縦隔型リンパ腫といいます。

 

呼吸が苦しくなったり食欲がなかったりします。

しかもかわいそうな事に、まだ若い2−3歳の猫ちゃんがかかります。

「なぜそんな若いのに…」と思われるでしょうが、実はほとんどの場合、猫白血病に感染が原因になっています。

 

猫白血病は感染している猫ちゃん同士で伝染します。

感染すると猫ちゃんの遺伝子の中に潜り込み、腫瘍化させたりします。

その一番の代表がリンパ腫です。

 

今は室内の猫ちゃんは15歳くらいまで生きてくれますが、

お外にいる野良ちゃんなんかは平均4−5歳くらいともいわれています。

その差は…事故などもありますが白血病とエイズの感染が大きいです。

 

今回は白血病に感染して、リンパ腫になってしまった猫ちゃんの話です。

 

この子はもともと野良の子猫ちゃんでした。

飼い主さんにであって保護されました。

ちょっと人見知りはしますが、おとなしいいい子です。

 

しかし最近ご飯の食べが悪いのと、呼吸が早いという事でいらっしゃいました。

 

猫ちゃんの呼吸が速いというのは、獣医師側もかなり気をつける症状です。

急激に悪化する可能性があるからです。

いろいろな原因が考えられます。

咳をして呼吸が速い・猫の喘息

 

できるだけ早く、ストレスをかけないように検査を進めていきます。

 

胸のレントゲンをとって見ると、

これは苦しいはずです。

胸の前の方が真っ白で胸水も溜まっています。

 

これはきっと…と思い胸の塊の細胞診をします。

胸に刺すのは注射用の細い針なので、大きなリスクなく検査できます。

 

顕微鏡をのぞいて見ると

腫瘍化したリンパ球だらけです。

縦隔型リンパ腫です。

確認のため白血病のウィルス検査をすると、やはり白血病に感染があります。

まだ2歳なのに悪性リンパ腫です。

 

どうにか楽に呼吸させてあげたい。

そんな思いで飼い主さんに、病気名と原因、症状をお伝えします。

そして治療方法です。

治療の選択肢は

①ステロイドで症状を少し和らげる+自宅で酸素室で安静にしてもらう。

②抗癌剤をつかってリンパ腫と戦う

 

の2つです。

 

飼い主さんは、若いのでもっと頑張って欲しいという事で、②の抗癌剤を選ばれました。

抗癌剤は辛いですかとよく聞かれます。

その時は「副作用は、出る子もいれば全く出ない子もいます。

一番リンパ腫の子で辛くないのが抗癌剤がきいて、体からリンパ腫がなくなった時です」

とお答えしています。

 

さてこの子は全く副作用もなく順調にプロトコールが進みました。

3回目の抗癌剤で腫瘍がレントゲンで確認できなくなりました。

完全寛解です。

レントゲンで肺が空気を含んで黒くなっているのがわかります。

治療前

治療後

 

食欲も、呼吸も元通りです。

治療していて一番うれしい瞬間です。

 

このいい状態をできるだけ長く維持できるように、継続治療が必要です。

腫瘍をもつ猫ちゃんと飼い主さんにとっては1日1日が大切です。

 

そんな日々のお手伝いをするのが、腫瘍科の獣医の使命と思います。

 

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岐阜県岐阜市柳津町4−17−1 はづき動物病院

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